お菓子な男の子
動物園はたくさんの人でにぎわっていた。家族連れ、カップル、友達同士……1人だったら浮きそう。
ここにきて、あまりお金を持っていなかったことに気づいた私は、入場券を買ってもらってしまった。


「ごめんね……1度家に帰る予定だったから……」
「気にしないで。もともと俺が払うつもりだったし。強引に連れ出したのは俺だから」


そうは言ってくれるけど、これじゃいつまでたっても斗哉くんにとって私は子どものままだ。
財布には600円ある。お昼ご飯は無理でも飲み物とかくらいなら買える。タイミング見て買おう!


「あ、のどかわいたら言ってね。ペットボトル、買ってあるから」
「………ありがとう」


作戦失敗‼あとはなんだ!?ソフトクリーム……は動物園では食べないかな?お土産……はたぶん買わないし。やっぱりお昼ご飯しかないかなぁ!?


「見て杏奈!えさやり体験いっぱいあるよ!ペンギンに猿に……キリンとゾウもある!」
「え……わっ!ほんといっぱい!ライオンのえさやりショーとか赤ちゃん展示もあるよ!」
「あっちでスタンプラリー配ってるってさ!やりながら園内まわるか」
「うん!」


私の頭の中はもう、動物のことでいっぱいになった。





「キリンの舌ってあんなに長いんだね」
「迫ってくる感じがすごかったけど、瞳がすごくきれいだった」
「うん。目ってさ、なんかいろいろと伝わるよね。目は口ほどにものをいう!」
「だから杏奈はあのペンギンに魚あげたかったの?ちょうだいって目してたもんね」
「小猿もそうだよ!なのにアイツっ……」


午前だけでたくさんの動物を見てまわれた。
キリンに手をベトベトにされて、ゾウの鼻に驚いて、お気に入りのペンギンにえさが届かなくて、小猿にあげたはずのえさをボスに取られて怒って……


でも楽しかった。なんか久しぶりにはしゃいだ。斗哉くんといると、ついついお兄ちゃんの雰囲気に甘えちゃう。
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