お菓子な男の子
「そろそろお昼だね。遊園地に移動して食べよう。あっちのフードコートのほうがおいしいんだよな」
「スタンプラリー、遊園地にもつながってるみたい。午後はそっちメインで遊ぼっか!」
「杏奈はお昼カレーライス?」
「覚えてくれてたんだ」
「ここ来るといっつもそれだったからな。すぐにジェットコースター乗っても気持ち悪くならないからって。医学習ってるけど、医学的根拠はなかったぞ?」
「気分的なもんなの!」


3年の間なんてなかったみたいに、斗哉くんは私のことを知っていてくれた。覚えていてくれた。でも私だって同じ。全部全部忘れていない。会って話して、再確認できた。やっぱり斗哉くんは私にとって大切な人だ。




お昼ご飯を終えて、しぶる斗哉くんを引っ張ってすぐにジェットコースターに乗った。バイキング、フリーフォール、回転ブランコ、ジェットコースター、ウォータースライダー、ジェットコースター…………絶叫系ばかりを選んで私は斗哉くんを引っ張り歩いた。


「杏奈……俺、疲れたよ……歳かな」
「4つしか違わないよ?」
「けっこう大きいんだよ。次はゆったりしたやつにしようよ」
「お化け屋敷行きたい!」
「杏奈ぁ……」


そう言いながら、必ず斗哉くんは私のワガママを聞いてくれる。昔からそうだった。
私と斗真が駄々をこねて、“仕方ないなぁ。お兄ちゃんだからな”って斗哉くんが笑ってくれる。それが本当の兄妹みたいで嬉しかった。


「お化け屋敷出たら、いったん休憩だからな」
「わかった」


私はわざとらしく腕を組んだ。斗真だったら絶対振りほどくけど、斗哉くんは優しく微笑む。
ここでは私は、気を張らなくていい。素直な私でいられる。
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