お菓子な男の子
お化け屋敷のあともいろんなアトラクションに乗り、やっと私が疲れてきてベンチに腰かけたのは夕方だった。


「杏奈、今日は楽しかった?」
「うん!すっごく!」


そう答えた私の顔を、斗哉くんはのぞきこんだ。


「え?なに?」
「んー?目を見てるんだ」
「目?」
「杏奈がほんとに楽しんでくれたんだなぁって安心できるんだ」


私と斗哉くんの視線がぶつかる。背中から差してくる夕陽が、斗哉くんの目に反射してきれい。
でもその目はどこか悲しげに見えた。


「斗哉くんといるのはいっつも楽しいよ。だから安心して」
「………うん」
「今度はさ、一緒にプラネタリウムに行きたいな。明日から天文部の合宿なんだけど、斗真も行くんだ。星に全然興味ないやつだったけど、今はプラネタリウムだって……」
「ねぇ、俺がどうしていつも動物園につれてくるか教えようか」
「え……?」


斗哉くんが私の話をさえぎるなんて初めてだった。
それに悲しそうな顔して……どうして?


「杏奈は星好き?」
「えっ……うん」
「本当に好き?」


なに?話の脈絡もないし、関係ない質問ばっかり。斗哉くんらしくない。
それに、私が星が好きってことは知ってるでしょ?


「星好きだよ!お父さんと流星群を見たあの日から私は……」
「じゃあどうして、星の話をしているとき、杏奈は悲しそうな目をするの?顔は笑っていても目は違う。本当は苦しいんじゃないの?」


斗哉くんの言葉に答えられなかった。
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