お菓子な男の子
お父さんは私が6歳の時に死んでしまった。事故だった。残業の仕事帰り、駅から家までの道で、飲酒運転の車にひき逃げされた。もう少し早く病院に行けたら助かっていたかもしれない。夜遅くて発見は遅れた。


それは夏だった。また流星群を見に行こうねって約束していたのに、それが果たされる前に、お父さんは私の前からいなくなってしまった。


最初で最後の本物の流星群が、私の心を離れなくなった。


お父さんがいなくなってから、私はプラネタリウムに通うようになった。本当は星が憎いものになっていた。それでも通ったのはお父さんが大好きだったから。本物の流星群を見たあの日のお父さんの言葉を信じたかった。
星を見ていれば、好きになれば、お父さんにまた会える……いつしか、星が本当に好きになっていった……


………はずだった。


斗哉くんの言葉はそれを否定した。


「俺が3年ぶりに帰ってきた理由の1つは、斗真から電話で天文部の合宿のことを聞いたからなんだ。合宿に行かせないために。おじさんが亡くなってからの杏奈を一番近くで見てきたから、俺は杏奈のことわかってるつもりだ。杏奈を悲しませたくない、苦しめたくない。だから杏奈を星から遠ざけてきた。それなのに……」


斗哉くん……


「杏奈、お前がおじさんを大好きだったのは知ってる。でももう星に囚われるのはやめよう。おじさんの代わりにはなれないかもしれない。でも、俺はそばにいるから。絶対に消えないから。だから……」


斗哉くんの目に映る夕陽が揺らいだ。


「俺を見て。好きだよ、杏奈」
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