お菓子な男の子
「もう手はなして!ここまできてひとりで行くなんて言わないから!」
「痛かったか?悪い……」
「え……べ、別に……」


素直に謝る斗真に、私は怒りを削がれた。斗真はどこか沈んでいるようで、ちゃんと見たらいつもと違うことはすぐにわかる。私、自分の気持ちばっかりで斗真のこと……


「私もごめん。ちょっと気持ちがごちゃごちゃしてて……」
「何かあったのか?」
「……大丈夫だよ」
「そうか。あ、話したいことだけどさ、兄ちゃん昨日の夜にむこうに帰った。急に予定が入ったとかで。兄ちゃんとまともに会えなかったな……」


私は昨日、斗哉くんに告白された。私は斗哉くんの“好き”を妹としてだと思って、私もお兄ちゃんとして好きだって言った。でもそれは勘違いで、結果的に斗哉くんを傷つけた。


恋愛としての“好き”なんてまだわからなくて、でも向き合わなかった私が悪い。怖いって言って向き合おうとしなかった私が……


「……ごめん」
「ん?何か言ったか、杏奈?」
「斗哉くん、どんな様子だった?」
「いつもと変わんなかった。杏奈によろしくって笑ってったよ」
「……ごめんね、斗真」
「なんで杏奈が謝んだよ」


斗哉くんが帰っちゃったのは私のせいだ。口には出さないけど斗真はお兄ちゃんが大好きなのに、私のせいで2人の、本当の家族の時間まで奪っちゃって……


しばらく無言で歩く。


「あっ来た!アンちゃ~んっ‼こっちこっち~‼」


気づけば駅の構内だった。


「杏奈、雨宮が手振ってんぞ」
「えっ、あ……」
「なんだよ、さっきから。謝ったりボーッとしたり。兄ちゃんと一生会えない訳じゃねぇし、しけた面すんな。かわいくねぇ顔がさらに崩れてんぞ」


落ちこんでる私に対する斗真の言葉……ムカついた。


「なによっ‼私は斗真を心配して……」
「ははっ、やっといつもの杏奈だな。そうやってギャーギャー騒いでくれたほうがマシだ」
「え……?」


斗真が、笑ってる……?斗真のそんな顔、見たのはいつぶりだろう……
< 127 / 181 >

この作品をシェア

pagetop