お菓子な男の子
ロープウェイに乗っている間、花梨ちゃんはずっと千夜先輩にしがみついていた。理由を知っている先輩は優しく頭をなでている。その様子を満足げに見ている久喜会長。あ、謀ったな?


ロープウェイはいくつかの駅を越えていく。それぞれの駅にそれぞれペンションがあるらしい。ひとつの山を切り開いて作られたペンション地帯(?)。その終着点、つまり一番高いところに位置するのが、私たちの宿泊する場所だった。


「よくお盆の時期にこんなところ取れましたね!」
「まぁ、俺の別荘だからな。このペンション群は普段は貸しているだけだから使うのは自由だ」
「え、じゃあこの特典でもらった宿泊券って……」
「母様のお手製だ。すごいだろう」
「ご両親はどのようなお仕事を……?」
「父様は不動産業、母様はプログラマーだ。それぞれ会社をもつ社長だが……どうした?」
「ありがとうございます……」


今回の合宿は久喜会長が1枚どころかかなり噛んでいることがわかった。そして、相当お金持ちだということも。
学校で1位2位を争うイケメンといわれていて、しかもお金持ち……そんな久喜会長、千夜先輩と合宿だなんて知れたら……女の子から袋叩きかな?


「どうした?顔が青いぞ?」


袋叩きを想像してしまった私を、心配そうに久喜会長が見つめる。
手を伸ばしてきたと思ったら、私の左頬に触れた。


「具合を悪くしたか?空気薄いからな。大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」


久喜会長の顔が近い。手を当てられた場所が徐々に熱くなっていく。


「お、赤くなってきたな。酸素が巡ってきたようだ」
「そう……みたいです……」


別の意味でちょっと苦しいです……。
< 129 / 181 >

この作品をシェア

pagetop