お菓子な男の子
「リ、リンゴ!?」
「リンゴちゃん先輩!」


さすがの花梨ちゃんも心配そうにリンゴを見つめている。
泣きながら、リンゴは言葉をしぼりだした。


「ごめ……ごめんね……ただ、ママが……」
「お母さんに何かあったの!?」


リンゴのお母さんは仕事で家をあけることが多い人だ。まさか、事故とか病気とか……


「ちが……ちがうの。さっき、さっきね……」
「さっきどうしたの!?」
「アンちゃん先輩もリンゴちゃん先輩もまず落ち着いてください!」


花梨ちゃんの言葉で、とりあえずソファーに座った。
そこでリンゴは静かに泣きながら話す。


「部屋を選んで荷物を置いたとき、ママから電話がきたの。私嬉しかったんだ。合宿のこと気にして電話してくれたのかなって」


リンゴは家族が、特にお母さんが好きだ。仕事でなかなか会えないお母さんと話すことが、リンゴは何よりも嬉しいんだってよく言ってるくらい。


「でも、違ったの。今日は帰るから夕ご飯の準備よろしくって……それだけ……」


そんな……


「私、今日から合宿だって話してたんだよ?なのに合宿でいないよって言ったら、なんで早く言わないの、じゃあもういいわって……電話切れて……ママは私に興味ないんだって、ただお家のことをする人だってしか思ってないのかなって思ったら……」


私はリンゴの立場にはなれないけど、気持ちはわかってると思う。
リンゴにとって、お母さんの言葉がどれだけのものなのか……私はなんて言えば……


「リン……」
「リンゴちゃん先輩。私もそう思ってました」


私のなぐさめより早く、花梨ちゃんが声をあげた。
その顔つきは真剣で、でも話の流れが理解できない。


「え……なにを……」
「だから、私も思ってたんです。ママに、両親に何とも思われてない、存在すらも邪魔なんじゃないかって」


まだ涙の止まらないリンゴに向き合った花梨ちゃんは、しっかりした口調で話し始めた。
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