お菓子な男の子
「私の両親忙しいからほとんど家にいなくて、私を育ててくれたのは家政婦さんでした。学校も転々とさせられて友達できなくて、家政婦さんもコロコロ変わって馴染めなくて、毎日寂しかった。でもそんな話をしたくても忙しいからって……話も聞いてもらえなかった」
リンゴを見ているはずの花梨ちゃんの目は、別のものを映してるような気がした。
「だからコウちゃんたちと過ごせる夏休みだけが唯一の楽しみだった。コウちゃん家にいるときだけが本当の家族に包まれてるようで……それで日本にくることにしたんです。どうせ両親は私に興味なんてないんだから。いなくなったって平気だろうって」
いつの間にかリンゴの涙も止まっていた。
両親がいるのにいない……そんな2人しかわからない何かがあるようで、私は少しだけ居心地が悪く感じてきた。
その時、ドアの外が急に騒がしくなった。
「いって‼おい、足踏んでんじゃねぇよ‼」
「静かにしてよコンペイくん。空気よんで」
「盗み聞きしてる時点で空気もくそもあるか!」
「コンペイくんもマリマリョくんもうるさいよ。花梨に気づかれる」
「知るかよ!俺には関係ね……っておわっ‼」
「え、ちょ……一臣!?」
ドアが開いて、真剣な空気をぶち壊すには十分すぎるほどのうるささがなだれ込んできた。千夜先輩と真島くん、斗真が山みたいに積み重なって、その後ろで久喜会長がにこにこ立っている。
「バーベキューの準備、こちらはできたぞ!早く始めよう!」
「一臣!」「会長さん!」「会長!」
もちろんタイミングは超絶悪いけど、その様子はまるでコントみたいで……
「ちょっと先輩たち!」
「………っあははは!みんな何してんの~」
リンゴが笑った。さっきまで泣いてたのがウソみたいに声をあげて。ウソじゃないって証拠は目にたまった涙。この様子ならすぐに乾きそうだけど。
でも、よかった。リンゴにとっても、私にとっても……
「始めようって言っても、まだお肉も野菜も下準備できてないんですけど……」
「みんなでやればすぐ終わるだろう。食材はどこだ?諸星」
「あ、キッチンに」
行こうとした私の腕を、誰かが引っ張った。
「え……」
「アンちゃん先輩。リンゴちゃん先輩、戻ったみたいでよかったですね。私の暴露話なくてもコウちゃんたちで十分だったみたい」
「あ、花梨ちゃん。ありが……」
「親子は必ずつながるタイミングがきます。私もそうだったから。今では毎日のようにパパとママからメールがきますよ?日本にきてよかったです」
そう言って、花梨ちゃんは笑った。
親子がつながるタイミング……その言葉が胸に引っかかる。
私とお父さんはまだつながってるかな。それとも私が星を理由につなぎ止めてるだけ……なのかな。
リンゴを見ているはずの花梨ちゃんの目は、別のものを映してるような気がした。
「だからコウちゃんたちと過ごせる夏休みだけが唯一の楽しみだった。コウちゃん家にいるときだけが本当の家族に包まれてるようで……それで日本にくることにしたんです。どうせ両親は私に興味なんてないんだから。いなくなったって平気だろうって」
いつの間にかリンゴの涙も止まっていた。
両親がいるのにいない……そんな2人しかわからない何かがあるようで、私は少しだけ居心地が悪く感じてきた。
その時、ドアの外が急に騒がしくなった。
「いって‼おい、足踏んでんじゃねぇよ‼」
「静かにしてよコンペイくん。空気よんで」
「盗み聞きしてる時点で空気もくそもあるか!」
「コンペイくんもマリマリョくんもうるさいよ。花梨に気づかれる」
「知るかよ!俺には関係ね……っておわっ‼」
「え、ちょ……一臣!?」
ドアが開いて、真剣な空気をぶち壊すには十分すぎるほどのうるささがなだれ込んできた。千夜先輩と真島くん、斗真が山みたいに積み重なって、その後ろで久喜会長がにこにこ立っている。
「バーベキューの準備、こちらはできたぞ!早く始めよう!」
「一臣!」「会長さん!」「会長!」
もちろんタイミングは超絶悪いけど、その様子はまるでコントみたいで……
「ちょっと先輩たち!」
「………っあははは!みんな何してんの~」
リンゴが笑った。さっきまで泣いてたのがウソみたいに声をあげて。ウソじゃないって証拠は目にたまった涙。この様子ならすぐに乾きそうだけど。
でも、よかった。リンゴにとっても、私にとっても……
「始めようって言っても、まだお肉も野菜も下準備できてないんですけど……」
「みんなでやればすぐ終わるだろう。食材はどこだ?諸星」
「あ、キッチンに」
行こうとした私の腕を、誰かが引っ張った。
「え……」
「アンちゃん先輩。リンゴちゃん先輩、戻ったみたいでよかったですね。私の暴露話なくてもコウちゃんたちで十分だったみたい」
「あ、花梨ちゃん。ありが……」
「親子は必ずつながるタイミングがきます。私もそうだったから。今では毎日のようにパパとママからメールがきますよ?日本にきてよかったです」
そう言って、花梨ちゃんは笑った。
親子がつながるタイミング……その言葉が胸に引っかかる。
私とお父さんはまだつながってるかな。それとも私が星を理由につなぎ止めてるだけ……なのかな。