お菓子な男の子
「十分暗くなったし、始めようか!きもだめし!」
「「「おー」」」


やる気MAXの久喜会長と、その気0の私たち。温度差がひどすぎる。
とはいってもペアは決まっちゃってるし、ちょっと曇りぎみのこの空じゃ、流星群もよく見えなさそう。明日もあることだし……


「実は一度ここに下見にきていてな、その時この森のある場所に箱を置いておいた。その中のあるものを持って帰ってくるんだ」
「あるもの……?」
「気になるだろう?みんなにとっては嬉しいものだと思うぞ!さ、出発しようか!」


と、一番張り切っていた久喜会長は、自分は隠し場所を知っているからときもだめしから抜けた。自分が抜ければ赤はちょうど2人になるし、そのほうが盛り上がるだろうと。
抜けたわりには、すごくニコニコしている。


「どうせ、こっそりついてきて俺らの様子を観察しているほうが楽しいと思ったんだろ」


千夜先輩の言葉に妙に納得できた。


じゃんけんで、私と真島くんの黄色から出発することになった。その5分後に緑の千夜先輩と花梨ちゃん、さらに5分後に赤の斗真とリンゴが続く。


「それじゃあ行こうか、杏奈ちゃん」
「あ、う、うん」
「手をつないでもいいんだぞ!」
「ふざけんな一臣!杏奈ちゃん!何かあったら、いやなくてもすぐ俺の携帯に電話…うぐっ……」
「早く行ってください、アンちゃん先輩」


ごちゃごちゃとうるさい場所から一歩、生い茂る木々の中に足を踏み入れると、まるで別世界のように暗く静かになった。


「杏奈ちゃんと僕、世界に2人きりみたいだね」


真島くんの言葉もあながち嘘ではないような気がした。
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