お菓子な男の子
「足元気をつけてね。木の根が出てるから」
「ありがとう」


心もとない1本の懐中電灯とおぼろげな月明かりだけが、行く道を示している。わずかな音でさえも感じ取れそうなほど静かで、呼吸をするのもためらうくらい。
どこを歩いていてどこに向かっているのかわからなくなってくる。2人きりになるのが気まずかったのに、今は隣に真島くんがいることに安心してしまう。


「真島くんは暗いのは平気?」
「んー、暗いのを怖い、とかは感じないかな。杏奈ちゃんは怖いの?」
「まぁ……少し?でも真島くんいるから今は大丈夫」
「よかった。手もつないだらもっと安心?」


冗談めいた様子で手を差し出す真島くん。私がだまって笑顔で返すと、真島くんも笑いながら手を戻した。


しばらく会話のないまま、ただ足を進めた。会話をしなくてもお互いの存在がわかる、そんな空気が心地よくなっていた。
真島くんのことはわからないことがいろいろあるけど、結局2人になると楽しさや安心感が勝って、疑問や不信感は後回しになる。
私、そうとう真島くんを信頼してるのかもしれない。


「あ……」


急な声に少し驚く。


「どうしたの?」
「見て、ひらけた場所に出れそうだよ」


目をこらすと、森の終わりが見えた。
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