お菓子な男の子
どうして……お父さんが……


「杏奈ちゃん、僕はお父さんじゃないよ」
「………あ、真島くん………」


真島くんの声で現実に戻った。お父さんはいない。隣にいるのは真島くんだ。
頭の中がいっぱいで、夢うつつになっていた。


「ごめんね。私……」
「いいよ。あの人のことを思い出すような景色だもんね」
「え、あの人って……」
「星が大好きだった、俺の父さんのこと」
「俺の……父さん……?」


一瞬、頭が真っ白になった。


私が考えていたのは私のお父さんのことで、真島くんのではない。
それに、流星群とお父さんの関係性を知っているのは斗哉くんとギリギリ斗真だけで、真島くんには詳しく話したことはない。


そうだ。放課後にクレープを食べに行った日からずっと気になっていたんだ。
真島くんは何かを知っている。隠している。何を?


「真島くん、真島くんは一体……」
「ほんとのんきだよね、お前は。こっちはさんざん苦しんできたのにさ」
「真島くん……?」


いつもと違う。口調も、雰囲気も。


「流星群にきれいな思い出重ねて、それで苦しんでるつもりで。俺には父さんとのいい思い出なんてひとつもない。そこにはいつも泣いてる母さんしかいないんだ」
「ちょ、ちょっと待って!真島くんの話が整理できないよ!私は自分のお父さんのことを……」


混乱する私に、真島くんは冷たく言った。


「やっぱり知らないんだな。お前の、諸星杏奈の父親は、俺真島亮輔の父親だ」


真島くんの言っていることが理解できなかった。
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