お菓子な男の子
「杏奈ちゃん、君には僕がどう見えていた?」


突然の質問だった。私に顔を向けた真島くんは、いつもの真島くんに戻っていた。


「どうって……」
「いつもの僕は、真島亮輔は、君にとってどんな存在だった?」


私にとっての真島くん……


小さい頃から斗真と同じように近くにいて、でも斗真とは正反対で。
優しくて、楽しくて、頼りになって、安心感があって。


一時は真島くんに疑問をもって気まずいとも感じた。でも、やっぱり……


「私にとっての真島くんは、そばにいてほしいと思う大切な人……だよ」
「それは僕だけに感じてるもの?」


真島くんは矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
どこか焦っているような、抑えこんでいるような……


「それは……真島くんだけじゃない」


大切、だけど真島くんだけに感じる特別な想いではない。
あの日からずっとふたをしてきた、この想いは……


「天文部に入って、みんなでいる時間が増えてきて、感じるようになってきたの。性格はバラバラだし、合わないときだってある。それでもみんなでいることが楽しくて居心地がよくなっている自分がいる。大好きだったお父さんがいなくなってから人と深く関わることが怖くなって、失う悲しみを味わいたくなくて、一線おいてきつもり。でもみんなはどんどん入り込んできて、嫌だったはずなのに今度は出ていってほしくなくなった」


遊園地で真島くんも聞いていたかもしれない。でも自分でももう一度言葉にしておきたかった。


「私にとって、みんなの存在が大切なの。お父さんの代わり……なんて言ったらみんなに失礼だけど、それくらい大切で、なくなってほしくない」


これが私の答えだ。
< 146 / 181 >

この作品をシェア

pagetop