お菓子な男の子
「あぁそう。もういいよ」


真島くんはつまらなげにそう言った。


「失敗したみたいだからさ、俺の復讐」
「え……復讐?」


また理解できない言葉が出てきた。復讐って、なに?


「まぁガキの頃に思いついた単純なもんだけどな。お前を裏切ってやろうと思ったんだよ。俺の母さんがされたように。お前が俺を好きになったとき、最後は捨てて苦しめて……ってさ。お前を大事にしてるお前の母親も、自分がしたことで娘が傷ついてるほうが効果あるだろうし」


戻ったと思っていたけど、やっぱりいつもの真島くんじゃない。
真島くん……そんなこと考えていたんだ。私と話すことも、学校に行くことも、見つめてくれていたことも、私を裏切るための布石だったの?


でもこれが本当の真島亮輔なんだ。苦しみと憎しみを隠してきた真島くんの本当の姿に、私は気づいてあげられなかっただけだ。


「幼稚な復讐だけど、同じ状況に追い込むには充分だ。雨宮はお前を捨てるときの材料だった。友達関係も壊すきっかけにもできるし。あーあ、俺を好きにさせる自信あったんだけどな。やっぱ邪魔だったわ、金平兄弟。俺の復讐に気づいてやがって……」
「やめて……」


気づけなかった私が悪い。それは分かる。でも、でも……


こんなこと真島くんから聞きたくない。私のことはいくら悪く言っても構わない。だけど関係ない人のことまでそんなひどい言い方しないでよ……


リンゴは本当に真島くんのことが好きなんだよ?斗真だってあんな口のきき方しかできないけど、真島くんといて楽しそうにしていることもあるって知ってる?


今までの思い出は全部が計算じゃないよね?今まで過ごしてきた時間の中で、本当の笑顔だってあったよね?本当の優しさも、信頼もあったよね?


「やめて……みんなを悪く言う真島くんなんて見たくないよ……」


私は絞り出すように言った。
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