お菓子な男の子
「雨宮、俺は……」
「言わなくてもわかってるよ。亮輔くんはアンちゃんを好きなのはわかってるから」


そうじゃないんだ。雨宮の気持ちを受け止める資格が俺にはないんだ。俺の意思で傷つけてしまった杏奈にだって、つながりを求めてはいけないのに……


「でも……私は亮輔くんの友達でいられればいい。だって、つながっているだけで幸せだから」


どうしてだよ。俺は雨宮を利用しようとしていたのに。それを知ってなんで、俺なんかに純粋な気持ちを向けられるんだよ。


「偽りでもなんでも、亮輔くんは亮輔くんだよ。私はどんな亮輔くんでも大好きだから」


まるで俺の心を見透かしたように、雨宮は言った。
そして、俺と逆の方向に歩きだした。


「ただ、アンちゃんにはちゃんと謝って。亮輔くんの友達として、アンちゃんの親友として、2人のつながりをなくしてほしくないから。私、アンちゃん迎えにいくね」


すれ違いざまに、雨宮はそう言った。
俺は答えることも、振り返ることもできなかった。


またひとりになった。
見上げた空はまだたくさんの星が輝いていた。


「なぁ父さん。そこから俺たちを見てんだろ?教えてくれよ。俺はこれから、どうすればいい……?」


俺が今相談できるのは、会ったことも話したこともないアンタだけなんだ。
俺の声に答えるかのように、星がひとつ、流れていった。それは希望の光なのか、こぼれた涙なのか……歩き出すには頼りない返事だった。
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