お菓子な男の子
“天文部” そう書かれたドアをあける。部員の減少にともなって徐々に縮小していく部室は、もはや物置小屋のようだった。真ん中には巨大な望遠鏡が置かれていて、それだけが、ここが天文部の部室であることを示している。


「来年はもっと小さくなるのかな、部室」
「これ以上小さい部屋ってあるの?この学校に」
「じゃあ、なくなる?」
「そしたらリンゴん家でやろ!」
「それもいいねぇ!」


もう廃部になること確定でわいわい盛り上がる私たち。
好きな星が見れるなら、別に天文部じゃなくても……


「じゃあ、俺の行く大学と合同でやればいいよ」
「千っ……いつの間に後ろに…」


さりげなく会話に入ってきて、さりげなく卒業しても一緒アピール……
斗真の話を思い出して、何も知らない千夜先輩が少し怖い。


「煌先輩と来年も一緒なんて考えられないですね」
「林檎ちゃんは辛辣だねぇ。まあ、俺の一存で決まることじゃないし。それよりあと2人だけど来るかなぁ、あいつら」


自分から話しといて、それよりって……てかリンゴ、ずいぶんはっきり言ったな…
リンゴは私にぴったりくっついて、千夜先輩に背を向けている。
そのほうが私も安心する。千夜先輩もリンゴがいるからか、あまり近くにこない。


あと2人というのは、話したことのない先輩のこと。確か、安藤先輩と慶樹先輩。
おそらく来ない。だって一度も来たことないし。


「仕方ない。始めるか」


千夜先輩も来ないと判断したみたい。いや、そもそも連絡したのかな?
あの笑顔、あやしい……


「大事な話ってのはね……」


リンゴが私の制服のすそをつかんだ。イヤな予感がする……そう言ってるみたい。
なんでそう感じたかって?私もそう思うから……
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