お菓子な男の子
沈黙……次の言葉を聞くのが怖い。
でもここで逃げ出したら、完全につながらなくなってしまう。


「俺は……」


真島くんと視線が合わさった。その目はまっすぐで、吸い込まれそうで……


「俺はわかってた。杏奈が悪くないことなんて。そばにいたのは復讐のため、俺を好きにさせるためだって思ってきた。でも本当は違ったんだ。俺の寂しさを埋めてくれていたのは昔から杏奈だったから」


真島くんとの距離が、少しずつ縮まっていく。
その表情がはっきりとしていく。


「復讐なんて言葉はただの強がりだったんだ。本当はずっと、杏奈を……」


目の前で立ち止まった真島くん。ふいに差しのべられた手。それは震えている。


「俺たちの出会いはここからだったでしょ?俺こそ勝手だ。でもまた作り直したいんだ。今度は本当の俺で向き合うから。……この手をつかんでくれる?」


久しぶりに見た笑顔。それは泣きそうにも見えたけど、私のほうがもっとそんな顔をしてる。何度となく触れてきた手。でも本当はあまりにも遠くて、今やっと、真島くんに触れられるんだ。


「ごめんね、ありがとう……亮くん」


私は手をつかんだ。とても暖かい手だった。
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