お菓子な男の子
「遅かったな」


学校に着くと、下駄箱の前に斗真が立っていた。


「今日は家出てくるのも遅ぇから、こっちの玄関で待っててやった」


いつものしかめ面。顔が赤いのは気のせいじゃなさそう。


「コンペイくんも律儀だね。毎日杏奈ちゃんのお出迎えなんてさ」
「うるせぇ」
「まだ守るの?杏奈ちゃんのこと」
「お前が杏奈の近くにいる限りな」


さっそく喧嘩ムード。斗真がここにいてくれたこと、なんだか嬉しかったのに、これじゃあ……


「ちょっと、2人とも……」
「安心してよ。俺にもうそんな気持ちはないよ。昨日話したでしょ?」
「お前に復讐心がないことは分かってる。でもな」
「あぁ、そういうこと」


私の心配をよそに、亮くんは斗真に近づく。
そして耳元に顔を寄せた。


「大丈夫だよ。俺はもう…………」
「っっっっっっっっ//」


なんて言ったのか聞こえなかった。でも斗真の顔がさらに赤くなったことだけが分かった。


さっと靴を履きかえ、亮くんは私たちを残して歩いていく。


「まし……」
「早く教室にいかないと、遅刻扱いになっちゃうよ!」


手をヒラヒラ振りながら去っていく亮くんを、真っ赤な顔のまま睨んでいる斗真。


「ねぇ、斗真。亮くんは何を話してたの?」


私の言葉に一瞬驚いた表情を見せた斗真は、すぐにしかめ面に戻った。


「うるせぇ、いいから教室いくぞ」
「でも気になるし……」
「亮輔のくだらない冗談話だ、気にすんな!」
「今っ……!」


斗真が亮くんを名前で呼んだ。それが嬉しい。
どんな会話があったかは知らない。でも今はこれが解答なのかもしれない。
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