お菓子な男の子
私たちは悩んだ(?)末、みんなには連絡せず、久喜会長とオープン時間まで並んだ。
その時間はとても穏やかで、ただただオープンを待ち遠しく思えた。ワクワクできた。


「みなさま、本日はスペーシアムリニューアルオープンにお越しいただき、ありがとうございます!これより、開館いたします!列を乱さず、ゆっくりと落ち着いて前にお進みください!」


腕時計の針が9時を示した時、館長さんの声が響き渡った。小さい頃から馴染みのある遠山武道(とおやまたけみち)館長は、自分の孫に似ていると、星にとても興味を持っていた私たちをすごく可愛がってくれた。


列は順調に進み、私たちの番が回ってきた。記念品はまだまだある。
館長さんは、私たちに気づいてにっこり笑ってくれた。


「君たちなら来てくれると思ってたよ。杏奈ちゃん、林檎ちゃん」
「当たり前だよ!私もアンちゃんも今日をすっごく楽しみにしてたんだから!」
「リニューアルおめでとう、館長さん」
「ありがとうね。はい、記念品だよ」


記念品は星座の描かれたかわいいマグカップ。全4種類で、春夏秋冬それぞれの空の星座がデザインされている。


「うわぁ、かわいい!これは冬の空だ!」
「リンゴは冬の空好きだもんね」
「アンちゃんは夏の空?」
「うん!すごく好き……」


初めて流星群を見た夏の日を思い出すから……


「館長さん、ありがとう!ちゃんと私たちの好きな季節覚えててくれ…た……館長さん?」


嬉しくてお礼を言おうと顔を上げると、不思議な光景があった。


「同じ高校の生徒会長をやらせていただいております」
「それで?どっちの彼氏なんだ?」
「いえ、そういう関係では…」
「それじゃあ一緒にきた説明つかんよ。まさかっ!ふ、二股か……?」
「仮にそうだとして両方を1度に連れてくるなど、肝が据わりすぎですね」


真剣な顔でどんな会話をしてるんじゃ……
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