お菓子な男の子
「館長さん!この人はね、天文部の部長のお目付っ…友達なの」
「いろいろあって煌先輩とはぐれちゃって、久喜会長に助けてもらったの」
「いろいろ訂正はあるが、そのような感じだな」
「煌…くんの……」

館長さんはまだ不満げな顔をしていたが、とりあえず納得したように久喜会長にマグカップを手渡した。季節は秋。


「秋は恋が散る季節……」


館長さんが何かをボソッとつぶやいた気がしたけど……なかったことで!



最後尾に走っていった3人は入館までにまだ時間がかかりそうだったから、先にプラネタリウム鑑賞券を買った。
それからしばらくして記念品はすべてなくなり、ほぼ同時に3人の姿が見えた。
驚くことに、まだ喧嘩をしていた。


「これは僕が受け取ったんだから僕のものでしょ」
「俺がもらうはずだったんだ!お前が横から手ぇ出したんだろ!」
「先頭に並んでたのは俺なんだけど?なんで後ろにいた君たちがもらう話になってるの?」


どうやら100名の最後だったらしい。1個のマグカップをめぐって争い中みたい。
ため息をつく私たちの隣で、久喜会長はなぜか嬉しそうに微笑んでいる。


真島くんが私たちに気づいた。


「あ、杏奈ちゃん!林檎ちゃん!」
「お前ら!どこにいたんだよ!携帯にも出ねぇしって……あ?会長?」


久喜会長は楽しげな顔で、やぁと軽く手をあげた。絶対にどっちが誰だか分かってない。


「一臣!?なんでいんの!?プラネタリウムなんて興味ないって昨日……」
「こちらに興味があった」
「え、マグカップ?これが欲しかったのか?」
「5000円だ。買うか?」
「え?どういう意味……てか高っ‼」


さっそく商談に入っている。
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