お菓子な男の子
「別に待ってなくていいのに」


玄関の横で腕を組んで寄りかかってる、しかめ面に向かって言った。


「うるせぇ。いいから早くしろよ」
「文句言うなら先行けばいいじゃん。1つ早い電車、斗真なら間に合うでしょ」


毎朝、金平斗真(かねひらとうま)は私を迎えに来る。準備に時間がかかる私は、いつも玄関で斗真を待たせる。
でも、“迎えに来て”も“待ってて”も言ったことがない。


それでも、“うるせぇ”が口癖な幼なじみは、毎朝欠かさず玄関前にいる。


「杏奈が乗る時間の電車は一番混んでるだろうが」
「…だから何?」


私たちが通う高校は少し遠くて、電車を使っている。
この時間は通勤ラッシュとかぶる。電車内はおしくらまんじゅう状態だ。
それに対しても文句があるなら、1つ早い電車で行けばって、さっきも言っ……


「最近、痴漢が出るってもっぱら噂になってんだよ。だ、だから…その…」


そういうことか。


「ふ~ん。私を守ってくれるってこと?」
「う、うるせぇ‼早く行くぞ‼」


真っ赤な顔の斗真は早足になって進む。
口は悪いけど、一応優しいとこはあるんだよね。口は悪いけど。


私は小走りで後を追った。
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