お菓子な男の子
駅は思った通り混んでいて、早足だった斗真とは簡単にはぐれてしまった。


「もう、なんなのアイツは!守るって言ったくせに‼」


やっぱり口が悪いだけの男だ。本当に優しいんだったら、はぐれないように手を引っ張ってくれるとか……それはちょっとイヤかな…?


「うひゃあ‼」


くだらないこと考えていたら、急に誰かに手を握られた。思わず変な声が出てしまった。
と、斗真?でも、こんなことするやつじゃない。じゃあ誰!?ち、痴漢!?


「早くホームに行かないと、電車に間に合わなくなっちゃうよ?」
「え…あっ!」


その人は私の手をひいて歩きだした。無理矢理じゃなくて、私の歩くスピードに合わせて。
この声と、この後ろ姿、そしてこの気遣いはっ‼


「おはよう、杏奈ちゃん。今日はコンペイくん、いないんだね。よかった!」
「真島くん!」


同じクラスの真島亮輔(ましまりょうすけ)だった。
家は近いわけじゃないけど、何気に幼稚園からずっと一緒だ。小学校6年間なんて、全部同じクラスだった。
てか、高2の今も…


「まもなく3番線に電車がまいり……」
「ちょっとだけ走るよ?杏奈ちゃん!」
「うん!」


とにかく走った。
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