お菓子な男の子
放課後になり、掃除も終わった私たちは部室に行った。今年になってまだ3回目の部室は、少しほこりがかっていた。


「ここも掃除しないとね……はぁ……」


私はため息交じりにつぶやいた。


「テスト終わってからね。今は勉強しないと」
「今日は勉強ムリ~ってごねてた人は誰だっけ」
「忘れたぁ~」


リンゴの中では勉強よりも掃除が嫌いらしい。覚えておこう。
呼び出した当の本人がいない部室で、待つこと30分がたった時だった。


「お待たせしました、アンちゃん先輩とリンゴちゃん先輩!なかなかコウちゃんが見つからなくて…やっぱり部長がいないと部活になりませんからね!」


遅れたことへの謝罪の言葉はなく、笑顔で登場した花梨ちゃんの右手の先には、千夜先輩がいた。
そして千夜先輩の右手の先には困り顔の久喜会長がいた。


「あれ?久喜会長も……?」
「今日は生徒会があるというのに、チヨが離してくれなくて困ってるんだ。諸星、なんとかしてくれ……」


千夜先輩の扱いに慣れている久喜会長が、私に助けを求めている。そうだ、この状況は私にしか打破できないんだ……


「あ、わかりました。さぁ、千夜先輩?その右手を離しましょう。そしたら……」
「イヤだ!絶対にイヤだ!一臣も一緒がいい‼」


まるで子どものようになっている千夜先輩。いつものプレイボーイ感がまったくない。花梨ちゃんってある意味すごいと思う。


「落ち着いて、千夜先輩。この手を離したら、私が繋いであげますから…」
「一臣、お役御免だ」


驚くほど早く、その右手は離された。久喜会長が軽く手をあげ走り去るのと同時に、私もリンゴの背後に回った。


伸ばされた千夜先輩の右手はむなしく空をつかみ、悲しげにダランと下がった。
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