お菓子な男の子
「あぁ、いきなりごめんね」


女の人に続いて、やわらかい男の人の声が聞こえた。私たちが驚いたのが伝わってたみたい。


「羊子ちゃん、もっと優しくね?ほら、急ににぎやかになったからどうしたのかなって。なんかあった?」


にこにこしながら近づいてくる男の職員さんの名札には呉文哉(くれふみや)と書かれている。
呉さんはいかにもフレンドリーって感じの人で、すごく若く見える。私たちと同じ高校生っていってもわからないくらい。


「ポスターが完成したのですが、どうでしょうか」
「お、見して?」


私が差し出した1枚を受け取った呉さんの眉間にしわがよる。
え……だめだった?


「あの…だめなら書き直し……」
「すごいね!」
「え?」


さっきまでの表情と逆の答えに驚いた。


「星に詳しいんだね!星座の位置関係とかバッチリ!」
「あっ、ありがとうございます」


星のことをほめられると嬉しい。この調子でどんどん書けそう。


「じゃあこれが原案ってことで、完成品はパソコンでよろしく」
「「「え?」」」
「あれ?説明したよね、羊子ちゃん」


呉さんは席に座ったままの女の職員さんに顔を向けた。名札には狭間羊子(はざまようこ)とある。
キリッとした顔のきれいな人……


「説明?しなくてもわかるでしょ?ポスターはパソコンで作るってことくらい」
「いやぁ、わかんないと思うなぁ」
「パソコンか……パソコンは使い方がわからん。諸星、真島、あとは頼んだ」
「「え?」」


話だけがトントン進んでいって、私たちの頭は追いつけなかった。
< 60 / 181 >

この作品をシェア

pagetop