お菓子な男の子
千夜先輩の家に着くと、花梨ちゃんが率先して案内を始めた。


「ここがコウちゃんの部屋です。どうぞ」
「うわ。むだに広い」
「テレビに冷蔵庫に……パソコン3台もある‼天体望遠鏡もこんなに……」
「ただ親が金持ちってだけだろ」


本気で驚く私と、あきれ顔・冷めた目の男2人。
マンションのワンルームっていってもいい広さの部屋。着いたときの家の大きさや外観も尋常じゃなかったけど……千夜先輩のご両親って一体何をしてる人なんだろう。


「なんで煌先輩の家にいるの?私」
「やっと頭覚めたの?まぁ成り行きでここにいるけど、リンゴは深く考えないで」
「林檎ちゃん、おはよう」
「亮輔くんがいる~‼それなら理由どうでもいいや!」


真島くんの笑顔ひとつですべてに納得できるリンゴって、幸せもんだと思う。
そんなことを考えてたら、部屋のドアが開いた。


「飲み物、紅茶でいいか?あぁ、適当に座ってくつろいでくれ。他人の部屋だからって遠慮することはない。ただベッドの下は閲覧禁止だぞ。そこは男のテリトリー……」
「変なこと言うなよ、一臣。そんなガキみたいなことしてるか」
「あれっ?く、久喜会長!?」


飲み物を運んできたのは、千夜先輩ではなく久喜会長だった。その後ろで千夜先輩が渋い顔をしている。
花梨ちゃんの表情はさらにかたくなっていた。


「勉強会をすると聞いて、講師役でもやろうかと思って来てみた。夕飯もついてくるって言うしな。昨日から父様も母様も温泉旅行に行かれてしまって困っていたんだ」
「父様…母様……」


内容よりもそっちが気になってしまった。
千夜先輩もだけど、久喜会長の育ちもすごく知りたい。なんか……面白そう。


久喜会長が紅茶をいれ始めた時、部屋に備え付けられていた電話が鳴った。


「もしもし……山口さん?あ、できた?早いね!急だったのにありがとう。うん、今行くよ」


今度は何?山口さんって誰?てか内線?それ使って会話すんの?各部屋に常備?
ヤバい。ここに来てからウチと違いすぎて疑問だらけだ。


「シェフから内線入ったよ。全員分の夕飯できたってさ。ポスターと勉強はディナーのあとで。さ、ダイニングルームに行こうか」


このセリフでわかったこと。千夜先輩は本当のお金持ちのぼっちゃんだということ。そして、ミステリー小説を読むということ。
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