お菓子な男の子
結局全員の宿泊が決定し、お風呂を借りたあと、12時まで勉強会を続けた。
お風呂は言うまでもなく、大きかった。大浴場とシャワールームが数個あって、男の子は大浴場でみんな仲良く入ったみたい。戻ってきたとき斗真が腰、真島くんが手首、千夜先輩が頬をおさえていて、久喜会長がニコニコしてたのは気になったけど。


12時を知らせる時計の音が家中に鳴り響いた。


「ふぁ~っ、やっと終わったぁ‼」
「リンゴそうとう駄々こねてたもんね。お泊まり会ならみんなでゲームしたいって」
「亮輔くんとツイスターゲームしたかったのに……」
「何狙ってんの、リンゴ」
「今からでもやる?あるけど、ツイスターゲーム。杏奈ちゃん、一緒に……」
「早く寝ましょう。明日もボランティアありますし」


千夜先輩を振り払い、花梨ちゃんの案内で千夜先輩姉の部屋に向かった。




「ここがレミちゃんの部屋です」
「予想通り広いね」
「うわぁ!かわいいぬいぐるみがたくさん!」


星の次にかわいいものが大好きなリンゴは、ベッドに走っていった。


「私、小学生のころは夏休みになったらひとりで日本にきて、何度もこの家に泊まってたんです。レミちゃんは星とか外国の話をいつも楽しそうに聞いてくれて……楽しかった。でももうできないんですよね」
「え?」


千夜先輩のお姉さん、千夜恋海(せんやれみ)さんは2年前に病気で亡くなったそうだ。千夜先輩に関する話を聞いたのは初めてだった。


「家族を失って泣いていたコウちゃんを見たとき、私決めたんです。コウちゃんの家族になるって。そしてずっとそばにいて、幸せにする、いつまでも笑顔にするって。これは私にしかできない。だってコウちゃんのこと、レミちゃんのことを誰よりも知ってるのは私だから……だから!」


花梨ちゃんが私をキッと見た。


「アンちゃん先輩には、絶対にコウちゃんを渡しません」


その目は真剣だった。
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