お菓子な男の子
「今の母さん、つまり後妻が来るまでは、3つの部屋はそのままに整えられていた。でもあの人は俺の母さんの痕跡をすべて消したがってさ、客室用に内装を変えさせたんだ。でも俺と姉さんは、大好きな3人の思い出を失いたくなくて……」


千夜煌は一度話を止め、寝返りを打った。


「秋田さんたちに頼んでそのままにしてもらってる。変えたってウソをついてもらった」
「それ、見られたら一発で……」
「よほど俺の母さんを嫌ってんだろうな。部屋に一切近づこうとしない。だからバレてない。離れ家もあるし、3つの客室は使われたことないんだ」


さすがに理解したようで、金平斗真も声を出さなかった。
時刻は1時を過ぎた。もう就寝……


「そういえばずっと聞きたかったことがあるんだけど、いい機会だし……チヨ先輩のお姉さんって、恋海さん?」
「真島、なんで知って……」
「久々に聞く名前だな」
「え?」


千夜煌が驚くのも無理はない。口にしていない名前が、高校で知り合った真島亮輔から出てくるのだから。そして、寝ていたはずの久喜一臣の声がしたのだから……。


「一臣、起きてたの?」
「俺は灯りがないと眠れない。チヨが消すから目が覚めた」
「さっきからどういう体質してんすか、会長」
「昔から変だよな。それより真島、姉さんのこと知ってるのか!?」
「ちょっとね……」


わけありのようだ。
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