お菓子な男の子
「そう、だったんだ」
「あぁ。レミが大学入って半年たったくらいだったか。急に倒れて、急性骨髄性白血病と診断された。頑張って治療に耐えたんだが……だめだった。あ、悪いなチヨ。辛いことを思い出させた」


黙ったままの千夜煌に、久喜一臣は声をかけた。


「会長さんのせいじゃない。もとは僕が聞き出したことだから……」


いつもは千夜煌につっかかる真島亮輔も、今ばかりは違った。
少しの間があって、やっと千夜煌が口を開いた。


「……大丈夫、辛いのは一臣だって同じだろ。いや、俺以上か……」
「そんなことは……」
「今さらだけど一臣、姉さんのこと好きだったんだろ。ずっと」


ベッドがかすかにきしんだ。


「本当に今さらだな……」


久喜一臣は答えた。その声は少し震えているようだった。


「俺はずっとレミが好きだったよ。でも子どもにとって5歳の差は大きかった。だから最期まで本人には伝えられなかったな」
「会長もあるんすね、そういう話」
「まぁこれだけだがな……ところで“会長も”ってことは金平もあるのか?」


急に空気が変わった。いつものおふざけ会長モードに入ったようだ。


「い、いや。お、俺は別に……」
「コンペイくん、すごく動揺してるみたいだけど?」
「うるせぇ‼真島、お前のほうがあるだろ‼」
「僕?そうだね、僕は杏奈ちゃんが大好きだよ?」
「杏っ……」


爆弾がひとつ、落とされた。
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