お菓子な男の子
布団がめくられる音がした。金平斗真が飛び起きたのだろう。


「今さらなに驚いてんの、コンペイくん。君には何度も言ってるようなもんだったじゃん」
「で、でもよ……」
「そんで、コンペイくんも杏奈ちゃんのこと好きなんでしょ」
「んなっ……」
「バレバレだって。ここにいる誰もが知ってるって」
「そうだったのか、金平、真島」
「例外がひとり……」


久喜一臣は人の恋愛には疎いらしい。金平斗真は声を失っている。


「あとはチヨ先輩だけど……花梨ちゃんが好きってことで合ってるよね?嫌よ嫌よも好きのうちってやつでしょ?」
「マシマリョくん、わかって言ってるよね、それ。俺が杏奈ちゃん好きだって」
「そうなのか!?」


久喜一臣は本当に人の恋愛には疎いらしい。


「僕は幼稚園から、幼なじみとしてずっと杏奈ちゃんだけを見てきた。誰にも渡さない」
「お前は幼なじみじゃねぇ、ただの長いクラスメイトだ。杏奈の幼なじみは俺だ!そんで、杏奈を一番す……す、好きなのは俺だっ‼」


真島亮輔と金平斗真は、自分の気持ちを初めてはっきりと言葉にした。
諸星杏奈が好き……それはライバル宣言のようにも思える。


「2人で完結しないでくれる?俺も杏奈ちゃんが好きなんだけど。姉さんを失って自暴自棄になってた俺の前に現れたのが杏奈ちゃんだった。どことなく似てるんだ、姉さんに。今度は失いたくない。誰よりも俺のそばにいてほしいんだ」


これは三つ巴の予感が……


「言われてみれば諸星はレミに似ているな。そのせいか、よく目で追ってしまうのは。大切にしたいと思ってしまうのは」
「「「え?」」」


久喜一臣の言葉は、3人にとっても予想外だったようだ。
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