お菓子な男の子
「リンゴ、勉強会は?」
「これ見てからー」
「わかってんの?明日は数学と化学なんだよ?」
「もうちょっとー。うわっ、これなつかしい!」
「リンゴっ‼いい加減に……」


ヤバいのは私よりもリンゴなのに!どうして私があせらなきゃいけないの!?


「だって!」


リンゴが大声をあげた。そんなこと珍しいからビックリした。


「だって、嬉しいんだもん。自分の小さいころの写真なんて、私1枚も持ってないから……こうやって形に残ってて、それが大事にされてるのが嬉しいんだもん……」
「リンゴ……」


リンゴの両親は仕事にしか興味がない人だって聞いたことがある。確かに、高校の行事にリンゴの両親が来たのを見たことがない。入学式ですらも……


写真の中のリンゴはどれも笑顔だ。この家にくるといつも以上にはしゃいでて、どうしてそんなに楽しいのか不思議に思ったこともあった。
でも納得した。“お母さま”って呼ぶ理由も、2人が似ている理由もなんとなく……


「……ごめん。リンゴの気持ち、考え……」
「それに!」


またリンゴが大声をあげた。


「な、なに?」
「それに……勉強道具忘れてきたんだもん……」


さっきまでのしんみりした空気は一気に消えた。もう同情の余地はない。


「どうして?」
「うん……どうしてかな?」


お母さんは隣でニコニコしながらアルバムを見ていた。
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