お菓子な男の子
あれから数十分後……


「教科書‼届けたからな‼」
「ありがと!帰っていいよ」
「おかしいだろ、その態度‼こんな時間に呼び出しといて‼」
「すご~い!ほんとの幼なじみみたい!窓だよ?窓から来た!漫画みたい‼」
「一応幼なじみだから……」


場所は変わって私の部屋。今の状況に興奮しているリンゴと、ムスッとしている斗真。
私はため息をつきながら窓を閉めた。


リンゴは何ひとつ、数学と化学のものを持っていなかった。うちには教科書とか資料集とかはもちろん1冊ずつしかない。そこで斗真の出番。


「斗哉くんの高校のときのもの残っててよかった。さ、リンゴ。勉強しよ」
「シカトか!?」
「あ、机の上のお母さん手作りクッキー食べていいよ。それお礼代わりね」
「……杏奈のじゃねぇのかよ………」
「ねぇ斗哉くんって誰?」


もっともな疑問だ。
なんかブツブツ文句を言いながらクッキーを食べている斗真を指差した。


「アイツのお兄さん。斗真と違って、かっこよくて、優しくて、なんでもできるいい人なんだ!名前も似てるのに性格が真逆なの。斗哉くん、今すっごく頭のいい大学の医学部でさ!」


斗哉くんは4つ上で、よく遊んでくれた。星の話もいっぱい聞いてくれた。一人っ子の私には本当のお兄ちゃんみたいだった。


「ね、斗真!斗哉くん、いつ帰ってくるの?」
「兄ちゃ……兄貴のことなんて知らね。それより勉強しろよ」
「なによ、むくれちゃって。ま、いいや。リンゴ、まずは数学ね」
「はーい」
「俺帰る」


斗真は普通に窓から出ていった。
私たちは教科書とノートに向き合った。
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