お菓子な男の子
斗哉くんの教科書は大事な部分にマークがされていたり、ちょこっとメモしてあったり、すごく見やすくてわかりやすくなっていた。教科書類と一緒に届けられた斗哉くんのノートも、まるで先生のものみたいに、きれいにきちんとまとめてあった。


「アンちゃん!このノートね、授業よりもわかりやすいの!」
「ほんと。学校の先生とか向いてるのに……」


私は斗哉くんの教科書をペラペラめくりながら答えた。
先生か……でも医者になるって決めたのは私のため。私のためだった。
“杏奈をもう二度と悲しませないから” そういって斗哉くんは離れていった。


「ねぇアンちゃん?」
「なに、リンゴ」
「こんな紙挟まってたんだけど……」
「紙?」


それはくしゃくしゃになっているただの白い紙で、半分に折られていた。
開いてみると幼いけど力強い字で言葉が書かれていた。


“あんなはおれがまもる にいさやんにはまけないから”


なんだこれ。もう一度半分に折り直すと、“はたしじよう”ってある。


字間違ってるし、小文字が大きくなってるし、「ん」はへびみたいだし……でも読める。
これ書いたの斗真?にいちゃん、ってあるし。果たし状……?


「アンちゃーん!ここわかんなーい!」
「あ、うん」


私はそれをポケットに押しこんだ。
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