お菓子な男の子
「はい、そこまで。後ろから解答用紙まわして」


先生の号令で、土日を合わせた6日間のテスト期間が終わった。教室のあちこちから、歓声と遊びの約束が聞こえる。


「アンちゃ~ん!終わったよぉ~‼」
「ね!やっと解放された」


今回は本当に疲れた。ボランティアとかリンゴの勉強会とか、いろいろあったからなぁ……。


「解放記念にクレープ食べに行かない?アンちゃんにはお世話になったから1個おごる!」
「ほんとっ!?行く行く‼うわぁ、何食べようかなぁ!」
「それ、僕も一緒していい?」
「あ、亮輔くん!おつかれさま」
「うん、おつかれ」


テスト期間中は席が出席番号順になるため、私の2つ前に座っている(間には持田くんがいました)真島くんが、私たちを見ながら軽く手を振っていた。


「亮輔くんもクレープ好きなの?」
「甘いものはだいたい好きだよ」
「私と一緒!あ、早く行かないと好きなクレープ売り切れちゃう!行こっ‼」
「リンゴ!かばん忘れてる!」


夢中になるとそのことしか考えられなくなるのは、リンゴの悪いところなのかいいところなのか……
でもそんなところもたまにうらやましくなる。


「林檎ちゃんはいつも元気でいいね」
「私が初めてリンゴに会ったときもそうだったよ」
「……僕が初めて会ったときは泣いてたかな」
「え?あ、そっか……」


数日前、リンゴに聞いた話を思い出した。小さい頃にプラネタリウム館で会ってたって話。
そうだ!真島くんに聞きたいことがあったんだ!


「あのさ、真島くん。そのことなんだけど……」
「早く行こう、杏奈ちゃん。林檎ちゃん、校門出てっちゃったよ」
「えっ、もう!?」


真島くんが指差す窓の下を見る。
リンゴはスキップをしながらだんだん遠ざかっていく。


「まわりが見えなくなるのはやっぱりリンゴの悪いところだ!」


私はリンゴのかばんをひっつかんで、人の少なくなった教室を飛び出した。
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