メガネ殿とお嫁さま

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「あの…これは?」

桜子さんは、
天井から吊り下げられた布を
引っ張った。

計3枚分のシーツを使用した。

「ボーダーラインです。
君は、そっち、
僕は、こっち。

ここにいる時は、
お互い決してこのラインを
超えてはいけません。」

僕は息を切らして言った。
結構しんどかった。

「お家の方たちに見られたら、
どうしましょうか。」

彼女は、拒否らず
質問をした。

「元々、掃除は自分でしますし、
洗濯物は離れの入り口に
置かれるだけで、箪笥と衣裳部屋には、
自分でしまいます。
滅多にカヨさんが入ることはありません。

まして、
蜜月中の夫婦だと思っている人たちが
この部屋においそれと入ることは、
ないでしょう。」

僕は、ついでに、
座敷から出て隣の衣装部屋を
見せた。

コートや帽子、靴などが
少しだけ置かれている。

「み…蜜月とはなんでしょう。」

彼女があんまり真剣に聞くので、
顔が赤くなってしまった。


「知らないなら知らなくていい」

と僕が言うと、

「はい。」

と素直に従った。


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