メガネ殿とお嫁さま
「僕らに1番は、
必要ないってことだろ?」
僕は言った。
「気づいたら、終わりなんだよ。
夢とか好きとか、
何?使命とか意思とか、
沢木のおっちゃんが言うような熱は、
俺らにとっちゃ天敵さ。
逃げることもできないし、
今の生活を守る、
資本を増やす跡取りが
求められてる。」
要くんは答えた。
「うん。
僕らは消えることも許されない。
要くんがいなかったら、
家族や社員は、
何にすがればいい?」
「理太。」
「うん?」
要くんが、
急に僕を呼んだ。
「頼むから、
俺の前から消えないでくれ。
こんなとこ、1人で立てない。」
要くんが、
泣きそうな顔をした。
僕は、要くんのことを何も分かってなかった。
こんな話を二人でしたのだって、
初めてだった。
僕は、その問いに、
頷くしかなかった。