メガネ殿とお嫁さま


「普通なんだよ。
同じ人間なんだ。

だけど、僕らの不運は、
普通であっては、いけないって
ことだよ。」


シュウくんが言った。


今なら分かるよ。


みんな、舞台に立ってるんだ。


金と暇があるやつは、
何でも出来て当たり前だ。

生まれた時から優秀で、
特別でなければならない。


だって、
あの日野原家のご子息でしょう?



「この舞台は降りらんねー。
幕が閉じるまで、
俺らは演じ続けるしかないんだ。

客席から無数の目が、
俺らを見てるんだ。

スポットライトに照らされた
その動向を仕草を、
品定めしているんだ。

どんなに優秀でも、
活躍するのは舞台の上だ。
今日のこれは例外だ。」

シュウくんは要くんと岩ちゃんを見て
言った。


修学旅行じゃなかったら、
民宿に泊まることは、
きっと許されなかっただろう。

家柄を知らない人たちと
過ごす中で、
要くんの良さが出たのは、
これが本当の要くんだからだ。

だけど、
ずっとここにいるわけにはいかない。

舞台には、
スポットライトが当たっていて、
またあそこに戻らないといけない。


「シュウくんの放浪癖も
今日ちょっと理解したよ。」

僕はシュウくんに言った。


「そう、俺にとっちゃ良い隠れ蓑さ。

ただし、今だけだけど。
来年医学部に入るから、
なかなかもう行けないだろうな。」

シュウくんは笑った。



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