メガネ殿とお嫁さま


「なんで泣いてるの。」

僕は、とうとう彼女に声をかけた。


「あっ…その…」

彼女は、ゴシゴシと
目をこすった。

僕は、その手を止めるため、
隣に腰掛けた。

「前から思ってたけど、
そんなにゴシゴシこすったら、
肌が腫れるよ。」

僕は、ハンカチを取り出し、
静かに、彼女の涙を拭った。

「じ、自分のもので拭きます。」
と彼女は、ハンカチを取り出した。



「どこが、武家の女子だよ。
持ってんなら、ちゃんと使おうよ。」


僕は、意地悪を言った。


この旅行中、
初めてまともな会話をしたことに
気づいた。



< 203 / 335 >

この作品をシェア

pagetop