メガネ殿とお嫁さま
「どうしたの?それ。」
要くんがおろおろと、
僕の周りで騒ぐ。
僕の顔が赤く腫れ上がっていたからだ。
「別に。こけただけ。
で、漁はどうだった?」
「それが、すっげー楽しくてさ!
俺が釣った魚おばちゃんに渡したから、
朝食に出るぜ!」
要くんが嬉しそうに
話し始めた。
今しかない自由を
僕らはお金で買っている。
金持ちの子どもに
お金を注ぐのは、
可哀想だからだ。
普通が許されない僕らに、
彼らはご慈悲を与えているだけだ。
要くんは、
もう、漁に出ることはないし、
僕も
彼女に触れることはない。
一生の思い出として、
波に流して帰るんだ。