メガネ殿とお嫁さま

若者が行き交う町を歩いて、
ハンバーガーを食べて、
電車に乗って、
映画を観に行った。

なんと、映画も初めてみたらしい。
ちなみに電車では、
切符を買うのにえらく大変な思いをした。

一体どんな生活をしてたんだ。

「普通ですよ?
山奥なだけで。」

彼女は笑った。


いやいや。
全然普通じゃないから。

僕は、彼女に順に聞いた。

「携帯電話」

ふるふると彼女は頭を横に振った。

「テレビ」

ふるふる


「洗濯機や炊飯器」

ふるふる


「まさかだけど、湯沸かし器」

ふるふる


「うそ。冷蔵庫?」

「冷蔵庫はあります。」

と、最後はなんとかOKだった。


「毎日どうしてたの?」

僕は不思議で仕方なかった。


「普通ですって。
薪割りや畑を手伝って、
鶏に餌をやったり。
裁縫や家事をしたり。」

彼女は楽しそうに言った。




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