メガネ殿とお嫁さま


「多分、あれは初恋だったね。」
「ぶふっ!」

要くんはしみじみと言ったから、
僕は盛大に吹き出した。

「す、すみません、ここ。」

後ろを通ったボーイさんに、
吹きこぼした飲みものを
片付けるようお願いした。


「俺、理太ちゃんが身体弱いのに、
何させてんだって
お母様に怒られたわけ。

理太ちゃんとはおうちで遊びなさいって。



でも、理太ちゃんの言うとおりだなって。

理太ちゃんと遊ぶ山は面白かったし、
それがなしになるくらいなら、
叱られた方がいいなー、て。」



「そっか。」


僕は要くんの言葉に頷いた。


「あんときの
理太ちゃん、
かっこよかったよ。

やっぱり、僕のヒーローだ。」

「全盛期ですから。」


僕らは笑った。



「だから、あん時の言葉
返してもいい?」

「何?」


要くんは、僕をまっすぐ見て言った。




「どうせ、ダメなら、
好きなことしたら?」




僕は、要くんが何を言ってるか
わからなかった。


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