メガネ殿とお嫁さま
「俺、綾小路家が一人娘だって、
知ってた。多分シュウくんも。
だから、反対したんだ。
結ばれないのに、仲良くなったら
理太ちゃんは、絶対苦しむから。
余計なこと言って、
本当にごめん。」
要くんの言葉に頭がついて行かない。
「でも、沙羅と婚約したり、
仕事手伝い初めて思ったんだ。
形だけ収まる御曹司なんて、
全然だめだ。届かないよ。
めいっぱいやって、
初めて誰かに認めてもらえるんだ。
俺の立場のために沙羅が必要なんじゃかい。
沙羅を苦しめないために頑張るんじゃない。
二人だから頑張れるんだよ。」
要くんの真剣な目に、
僕は、金槌で頭を殴られた気がした。
「…要くんが、変わったのは、
沙羅ちゃんのおかげだよ。」
僕はそう言うのが精一杯だった。
だってそうだろう。
「一抜け許すから。
今度は俺が理太ちゃんを支える。」
要くんがそう言うのを、
僕は肩を叩いて制した。
「要くんのせいじゃないよ。
僕が決めたんだ。
自分がなすべきことを。」
それから、そう言った。