メガネ殿とお嫁さま

幼いころから、
みんなよく顔を合わせた。


親戚でもない、
同級生でもない、
なのに、仲間だった。

今、6人中3人は日本にいない。

もう、昔のままでいられないのに、
それが嬉しくもある。


沢木先生が見ていたものが
何だったか少し分かる。


僕らは同じ港から、
世界に飛び出していくんだ。


あの時は、何も考えなかったけれど、
先生が、言うように、
僕らの細胞がご先祖様だったころ、
僕らは、
今と同じように、
未来を見たんだ。


自分たちが何をなすべきか。
仲間の背中を見守り、
また自分の背中を
仲間が見守ってくれた。


もしかしたら、
恋愛相談だってしたかもしれない。

「お前の好きにしろ。」

そう言って背中を押したかもしれない。


そこで、僕らは、
一人でもようやく走ることが出来たんだ。



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