メガネ殿とお嫁さま


「…。


ま、それはいいや。

じゃあ、僕が外で座ってたの
知ってたの?」


にっこりと僕に笑いかける桜子さん。


うわ、知ってたんだな。



「必死だったのに。」

僕は、またいじけて言った。


「私は、何度も外へ行こうと。

しかし、
実は、まだ父が少し疑ってたんです。
ですから、
あれで、理太さまの気持ちが
ちゃんと分かって。

理太さまは、お辛かったと思いますが、
私は、ずっと、顔がにやけそうでした。

まるで、
お姫様になったようでした。」


と彼女は、少し、目に涙を溜めた。



「…ふ。

君が嬉しかったならそれでいいよ。

だから、ご褒美をくれよ。」


僕は、仰向けに寝転んだまま、
彼女の頬に手を当てた。


「今日は甘えん坊なんですね。
昨日は恐いくらいでしたのに。」

彼女は、僕の手を両手で握った。


「本来こんなもんだよ。

だから、早く。」


僕はそう言った。


彼女の影が僕を囲い、
しばらくすると、
柔らかい唇の感触が
僕に訪れた。




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