メガネ殿とお嫁さま


「理太ちゃーん。
卒業なんてさみしいよぉ〜!
4人もいなくなるなんてー。


えー!つーめーたいー!


ちょ。さあちゃん!
今、お菓子食べた?!
ウェストあと1センチだよ!

あ、ごめん。
さあちゃんのウェディングドレス
作ってるんだけど、
さあちゃんがさー…


え?150年後?

わかんないよー。

そうだなー。

なんか未来の服って本当に
映画みたいに地味なのかな。
そりゃぁ今みたいに毛皮とか
派手な素材や手間のかかるものは、
なくなるかもだけど、
わくわくする服が
あればいいなー。」

ブロンド髪の男の子は、
目を閉じた。


「今ね、手紬ぎの生産地と
仕事をしてるんだけど、
すごくいいんだ。

うまく言えないけど、
生産性は低いし、
手間はかかるんだけど、
やっぱりいいんだ。

150年後に絶対残したい。」


加賀屋 岩十郎。

彼は、繊維界の大重鎮として、
その一生を捧げた。

世界中に日本の手紬や蚕産業、
手織り、草木染めなど
さまざまな技術を伝え、
たくさんの人に仕事を与えた。

ある民族の女性と恋に落ち、
彼は企業トップ代表から引退。

引退後、彼女と自給自足の生活をしながら、
ファッションの真髄を説き続けた。





< 329 / 335 >

この作品をシェア

pagetop