メガネ殿とお嫁さま

あのあと、彼女はなかなか寝室に
行かず、
僕らは一時休戦し、
お重に入ったご飯を食べた。

食べ終わると再び、
彼女が一緒に寝ないなら、
自分がソファで寝るとか
だったら自分が家に帰るとか
言い出して、
僕は、仕方なく言うことを聞いた。


「武家のお嫁さんって、
主人の言うこときくんじゃなかった?
すげー頑固なんですけど。」

僕は、諦めて、
寝ながら聞いた。


「はい。理太さまに従います。
理不尽な命令以外は。」

彼女は、そう言って
にこにこ笑った。


「なんだそれ。」

何が理不尽だよ。
男が布団で寝られないことなんて
全然理不尽じゃないよ。


僕は、
さっきの生足が頭から離れない。
しかも布団の下は布切れ数枚。


うーん。
こっちのほうが、
よっぽど理不尽だ。


「…。じゃぁさ、
その、



初夜的なことも
試してみよっか。」


い、い、い、
言ってしまったあああああ!!


人生で一番思い切ったああああ!


酒ってものは
恐ろしいいい!!


俺は目をぎんぎんに開いて、
横目で彼女を見た。



「…



…すーすー。」




…。

おいおい、
すげー寝つきいいな。


「…しょ、初夜。」


僕は、
とりあえず、
残念なような救われたような思いと
駆られるような性欲とで、
頭がぐちゃぐちゃになっていた。


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