不順な恋の始め方
「大橋……それって、何時頃に見たの?」
「え? あー……確か7時頃か、それよりちょっと前くらいだったかな」
ドクン─────
違う意味で胸の鼓動が高鳴った。
それと共に、何故か凄く嫌な予感がしてしまった。
「どうした? 森下」
「え? う、ううん。何でもない」
「きっと先輩ショックなんですよー、坂口先輩のこと王子様って言ってたくらいだし」
「あー、言ってたなそういや。まあ、所詮坂口先輩も男って事だな。ドーンマイ」
軽く私の肩に手を置いた大橋。
その大橋の行動と、冗談で言ったつもりであろう言葉が何故か大きく心を揺らして、私はつい大橋の手を払いのけてしまった。
「え、森下?」
「……さっ……坂口先輩は……そんな人じゃない……見間違いだよ、きっと」
「え、ちょ、森下…!」
「森下先輩!」
私を呼ぶ2人の声を背に、私はオフィスを出ると行くあてもなく歩き続けた