不順な恋の始め方

もしかして、という私の予感は見事当たっていたらしく涼ちゃんは一度だけ頷いた。


「社内の派手めな女の子と……って話。 ちゃんと全部聞いた」

「そっか……」

「そんなに、信じられないの? 坂口先輩のこと」


真っ直ぐ、涼ちゃんが私に問いかける。

私は決まりが悪く涼ちゃんから視線を外してフローリングの床を見つめた。


「ちょっと前の子供みたいにわんわん泣きじゃくってたあんたにも言ったけど、ちゃんと信じるって決めたばかりじゃない。」

「そう、なんだけど……」

「柚希は坂口先輩がそんなことする人だって思ってるの?」

「……違っ……!! そんなこと、思ってない。思うわけない……けど」


「……けど?」


ゆっくり、大きく、深呼吸をして。ぎゅっと、強く、両方の拳を膝の上で握りしめた。

それから、ゆっくりと口を開く。



「……だって……私と譲だってそうだったから。 恋人同士じゃないのに、あの日……」



カラダの関係を、もってしまったから。

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