不順な恋の始め方
「柚希……」
「う、涼ちゃん……ど、しよ……」
強く握り締めていた私の拳を、涼ちゃんの手が、上から包むようにして優しく触れた。
びっくりして私は涼ちゃんの方を見ると、何故か涼ちゃんも泣いていて。私は驚きのあまり涙が止まってしまった。
「り、涼ちゃん……?」
「柚希、あんた……ちゃんと好きじゃない。坂口先輩のこと」
「え……?」
「坂口先輩の事で、こんなに悩んで。泣いて。笑って。……もう、ちゃんと好きじゃないの」
良かった、と泣きながら笑う涼ちゃんに私は教えられてしまった。
私は……
私は、もう
譲の事を〝好き〟なんだと─────。