不順な恋の始め方
譲は一瞬驚いた顔をした後、またすぐに複雑そうな表情になる。
そして「うん。ええよ。俺もちょうど話したい事あってん」と小さく言った。
その譲の言葉に ドクン、と跳ねた私の胸は何か嫌な予感を感じている。
〝俺もちょうど話したい事あってん〟
複雑な表情に、このタイミングでのこの言葉。
思いつく話なんてひとつしかなかった。
「……分かりました。では、またあとで」
私は早くも熱くなってきた目頭に力を入れ、足早にその場を去る。
やっぱり譲は、佐藤さんと……?
私は、もう譲と終わってしまうの……?
……いや、そもそも譲の中では始まっていなかったのかもしれない。
そんなネガティブなことばかりを考えて、私は自分のデスクへとついた───。