不順な恋の始め方

譲は一瞬驚いた顔をした後、またすぐに複雑そうな表情になる。

そして「うん。ええよ。俺もちょうど話したい事あってん」と小さく言った。


その譲の言葉に ドクン、と跳ねた私の胸は何か嫌な予感を感じている。


〝俺もちょうど話したい事あってん〟


複雑な表情に、このタイミングでのこの言葉。

思いつく話なんてひとつしかなかった。



「……分かりました。では、またあとで」



私は早くも熱くなってきた目頭に力を入れ、足早にその場を去る。



やっぱり譲は、佐藤さんと……?

私は、もう譲と終わってしまうの……?



……いや、そもそも譲の中では始まっていなかったのかもしれない。


そんなネガティブなことばかりを考えて、私は自分のデスクへとついた───。

< 117 / 195 >

この作品をシェア

pagetop