不順な恋の始め方

そして、そんな大橋が私と菅ちゃんを連れてやって来た所とは、社内の廊下の突き当たり手前で。


「え、大橋、なに?」

「しーっ!静かに」


私が大橋を再び問い詰めようとすると、大橋ひ慌てて人差し指を唇の前にもってきた


「え?」

「ちょっ、2人とも静かにバレないようにあそこ見て」


大橋の差す〝あそこ〟というのはこの廊下の突き当たりを右折した先。

私はとりあえず大橋に言われた通り、右手にある壁からひょっこりと顔を出し、その廊下の先を見た。


すると、その廊下の先には


「ゆ、ずる……」

「坂口先輩と……さとゆり……?」



譲と佐藤さんが、2人きりで話している姿があった。


2人の姿を覗くのをやめた私のことを、菅ちゃんが心配そうに見つめる。

私は、菅ちゃんに「やっぱりそういうことだったのかな?」と小さく呟いて、無理矢理笑って見せた。


「先輩…無理しなくていいですよ」


……と、まぁ、菅ちゃんにはそんな作り笑いは簡単に見透かされてしまったのだけれど。

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