不順な恋の始め方

「……大橋、菅ちゃん、ごめん。ちょっと私仕事戻る」


「え? あれ? 森下?」

「大橋先輩のバカ!もう!ほんっとお節介なんだから!!」

「な! は!? お節介!? お前、先輩に向かって…!!」


私は大橋と菅ちゃんの小さな言い合いを背に、オフィスへの方向ではなく、非常階段の方へと足を進めた。



ガチャン────



静かに扉を閉め、コンクリートで出来ている階段へとゆっくり腰掛けた。


もう、完全に終わったと思った。

正直なところ、少しだけ……本当に少しだけ。別れ話なんかではなく、他の話なのでは? なんて、希望を抱いていたのだけれど。


多分、それはない。

きっと、多分、別れ話。


そうじゃないとしても、佐藤さんとは何かしらの関係がある方向で間違いないだろう。


譲の事だから、もし佐藤さんのことが好きでも私の責任はとるなんて言いそうだなぁ。



「………どっちにしても、辛いかも」



どっちも、私には辛い。残酷すぎる。

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